空き家対策特別措置法は、空き家問題に対処するために制定された法律です。所有者はこの法律を理解し、適切に対応する必要があります。この記事では、空き家対策特別措置法の概要から改正ポイント、所有者が知っておくべき対策について解説します。
目次
空き家対策特別措置法とは?
空き家対策特別措置法の概要
特定空家の定義と判断基準
所有者の責務と罰則
空き家対策特別措置法の改正ポイント
管理不全空家への対策強化
空き家活用促進のための支援
相続登記義務化との関連性
所有者ができる空き家対策
定期的なメンテナンスと管理
空き家の活用方法の検討
専門家への相談
空き家対策特別措置法に関するFAQ
Q. 特定空家に指定されるとどうなりますか?
Q. 相続した空き家をどうすれば良いかわかりません。
Q. 空き家の解体費用は誰が負担しますか?
まとめ
空き家対策特別措置法とは?
空き家対策特別措置法の概要
空き家対策特別措置法は、全国的に増加している空き家問題に対処するために制定された法律です。この法律の主な目的は、適切な管理が行われていない空き家が周辺の生活環境に悪影響を及ぼすことを防ぐことにあります。具体的には、倒壊の危険性があったり、衛生上の問題を引き起こしたり、景観を著しく損ねたりする空き家を減らすことを目指しています。
この法律は、空き家の所有者に対して、その空き家を適切に管理する責任を明確にしています。そして、特に問題のある空き家、つまり「特定空家」に指定された場合には、所有者に対して改善措置を求めたり、最終的には行政が強制的に解体したりすることも可能としています。
さらに、特定空家に指定されると、固定資産税の優遇措置が受けられなくなるという経済的なデメリットも発生します。これは、空き家の放置を抑制し、所有者による適切な管理を促すためのインセンティブとして機能します。空き家問題は地域社会全体の課題であるという認識のもと、この法律は、空き家の有効活用や再利用を促進するための支援策も盛り込んでいます。
特定空家の定義と判断基準
特定空家とは、空き家対策特別措置法において、特に周辺の生活環境に悪影響を及ぼす可能性が高いと判断された空き家のことを指します。その定義は、以下の4つの基準に基づいて判断されます。
1.倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態:建物の基礎や柱、屋根などが著しく劣化し、地震や強風などで倒壊する危険性が高い状態です。放置すれば近隣住民に危害を加える可能性があります。
2.衛生上有害となるおそれのある状態:ゴミの不法投棄や動物の侵入などにより、悪臭が発生したり、害虫が発生したりするなど、衛生的な環境が損なわれている状態です。感染症の発生源となる可能性もあります。
3.著しく景観を損なっている状態:建物の外壁が剥がれ落ちたり、雑草が繁茂したりして、周辺の景観を著しく損ねている状態です。地域の美観を損ねるだけでなく、治安の悪化にもつながるおそれがあります。
4.周辺の生活環境の保全上不適切である状態:上記以外にも、周辺住民の生活環境に悪影響を及ぼすと判断される状態です。例えば、騒音や悪臭、犯罪の誘発などが挙げられます。
これらの基準に基づき、市町村が現地調査などを行い、総合的に判断して特定空家を認定します。
所有者の責務と罰則
空き家の所有者は、空き家対策特別措置法に基づき、その空き家を適切に管理する義務を負っています。この義務を怠ると、市町村から指導、勧告、命令といった段階的な措置を受けることになります。
まず、市町村は、空き家の状態が不適切であると判断した場合、所有者に対して改善を求める指導を行います。この指導に従わない場合、勧告が出されます。勧告を受けた場合、固定資産税の住宅用地特例が解除され、税負担が増加する可能性があります。
さらに、勧告にも従わない場合、市町村は所有者に対して改善命令を出すことができます。この命令に従わない場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。また、命令を無視し続けると、最終的には行政代執行という手段が取られることがあります。これは、市町村が所有者に代わって空き家を解体したり、修繕したりするもので、その費用は所有者に請求されます。
このように、空き家対策特別措置法は、所有者に対して空き家の適切な管理を強く求めるものであり、義務を怠った場合には厳しい罰則が科せられる可能性があります。
空き家対策特別措置法の改正ポイント
管理不全空家への対策強化
空き家対策特別措置法の改正において、特に重要なポイントの一つが、「管理不全空家」という新たな概念の導入と、それに対する対策の強化です。改正前は、特定空家に該当する状態にならないと、市町村が所有者に対して具体的な措置を講じることができませんでした。しかし、特定空家に該当するまで放置してしまうと、改善にかかる費用や手間が大きくなり、所有者の負担も増大していました。
そこで、改正法では、特定空家になるおそれのある、管理が不十分な空き家を「管理不全空家」と定義し、特定空家になる前段階での対策を可能にしました。具体的には、市町村は管理不全空家の所有者に対して、助言や指導を行うことができます。これにより、早期の段階で空き家の管理状況を改善し、特定空家への移行を防ぐことが期待されます。
管理不全空家への対策強化は、空き家問題の深刻化を未然に防ぐための重要な一歩と言えるでしょう。所有者にとっても、早期に対策を講じることで、費用負担を抑え、空き家の適切な管理につなげることができます。
空き家活用促進のための支援
今回の空き家対策特別措置法の改正では、空き家の活用を促進するための支援策も強化されています。これは、単に空き家を解体するだけでなく、有効活用することで地域活性化に貢献するという視点に基づいています。
具体的には、空き家バンクへの登録支援、改修費用の補助、NPO法人等の支援団体との連携などが挙げられます。空き家バンクは、空き家を貸したい・売りたい所有者と、空き家を借りたい・買いたい人をつなぐプラットフォームです。市町村が運営する空き家バンクも多く、安心して利用できます。また、空き家を改修して再利用する場合、その費用の一部を補助する制度も設けられています。これにより、空き家の活用にかかる経済的な負担を軽減し、より多くの空き家が有効活用されることが期待されます。
さらに、NPO法人等の支援団体との連携を強化することで、空き家の活用に関する専門的な知識やノウハウを提供したり、地域住民との交流を促進したりするなど、多角的な支援を行うことが可能になります。これらの支援策を通じて、空き家の有効活用を促進し、地域活性化に貢献することが期待されています。
相続登記義務化との関連性
2024年4月1日から開始された相続登記の義務化は、空き家問題の解決に向けて非常に重要な意味を持っています。これまで、相続登記は義務ではなかったため、相続が発生しても登記が行われず、所有者が不明な空き家が増加する一因となっていました。
所有者が不明確な空き家は、管理が行き届かないことが多く、特定空家になるリスクが高まります。また、活用したくても所有者が分からないため、活用が進まないという問題もありました。相続登記の義務化により、相続が発生した際には必ず登記を行う必要が生じ、所有者が明確になります。
これにより、市町村は空き家の所有者に対して適切な管理を促しやすくなり、空き家の活用に向けた働きかけも行いやすくなります。また、所有者自身も、相続した空き家を放置することなく、積極的に活用を検討するようになることが期待されます。相続登記の義務化は、空き家問題の根本的な解決に向けた重要な一歩と言えるでしょう。
所有者ができる空き家対策
定期的なメンテナンスと管理
空き家を所有する場合、最も重要な対策の一つが、定期的なメンテナンスと管理です。空き家は人が住んでいないため、どうしても劣化が進みやすく、放置すればあっという間に特定空家に指定される可能性が高まります。定期的なメンテナンスと管理を行うことで、建物の劣化を遅らせ、特定空家になるリスクを軽減することができます。
具体的には、以下のようなメンテナンスを行いましょう。
1.建物の清掃:室内の清掃はもちろん、外壁や屋根の清掃も行いましょう。汚れを落とすことで、建物の美観を保ち、劣化を防ぐことができます。
2.換気:定期的に窓を開けて換気を行いましょう。湿気を逃がすことで、カビの発生を防ぎ、建物の腐食を抑制できます。
3.雨漏りのチェック:雨漏りがないか定期的に確認しましょう。雨漏りは建物の構造を腐食させる原因となります。早期発見・早期対応が重要です。
4.雑草の除去:敷地内の雑草を定期的に除去しましょう。雑草の繁茂は、景観を損ねるだけでなく、害虫の発生や不法投棄を招く原因となります。
5.通風・通水:長期間水道を使用しないと、配管が錆びたり、水が腐ったりすることがあります。定期的に水道を使い、配管内の水を入れ替えましょう。
これらのメンテナンスを定期的に行うことで、空き家の状態を良好に保ち、特定空家になるリスクを大きく減らすことができます。
空き家の活用方法の検討
空き家を所有している場合、放置するのではなく、積極的に活用方法を検討することが重要です。空き家は、所有しているだけでも固定資産税や都市計画税などの税金がかかります。また、管理を怠ると特定空家に指定され、税負担が増加する可能性もあります。空き家を活用することで、これらの負担を軽減し、収入を得ることも可能です。
空き家の活用方法としては、以下のようなものが考えられます。
1.賃貸物件として活用する:リフォームやリノベーションを行い、賃貸物件として貸し出すことで、安定した収入を得ることができます。地域のニーズに合わせて、単身者向け、ファミリー向けなど、ターゲット層を設定すると良いでしょう。
2.売却する:空き家を売却することで、まとまった資金を得ることができます。不動産会社に査定を依頼し、相場を把握した上で売却を検討しましょう。
3.リフォームして再利用する:自分で住むのはもちろん、セカンドハウスや趣味のスペースとして活用することもできます。DIYに挑戦してみるのも良いでしょう。
4.地域活動の拠点として活用する:地域のNPO法人やボランティア団体に貸し出し、地域交流の拠点として活用してもらうのも良いでしょう。
5.駐車場として活用する:更地にして駐車場として活用することもできます。ただし、固定資産税の住宅用地特例が解除される点に注意が必要です。
これらの活用方法を検討する際には、専門家(不動産会社、建築士、税理士など)に相談し、最適な方法を見つけることが大切です。
専門家への相談
空き家対策は、専門的な知識が必要となる場面が多々あります。そのため、空き家の管理や活用について悩んでいる場合は、早めに専門家に相談することをおすすめします。専門家のアドバイスを受けることで、適切な対策を講じることができ、空き家問題の解決に繋がる可能性が高まります。
相談できる専門家としては、以下のような方が挙げられます。
1.不動産会社:空き家の売却や賃貸に関する相談に乗ってくれます。市場動向や相場を把握しており、最適な活用方法を提案してくれます。
2.建築士:空き家のリフォームやリノベーションに関する相談に乗ってくれます。建物の構造や法令に精通しており、安全で快適な空間づくりをサポートしてくれます。
3.税理士:空き家に関する税金(固定資産税、都市計画税、所得税、相続税など)に関する相談に乗ってくれます。税務上のメリットやデメリットを考慮した上で、最適な節税対策を提案してくれます。
4.弁護士:空き家に関する法律問題(相続、権利関係、契約など)に関する相談に乗ってくれます。法的トラブルを未然に防ぎ、円滑な解決をサポートしてくれます。
5.空き家相談窓口:各自治体では、空き家に関する相談窓口を設けています。専門家への相談窓口を紹介してくれたり、空き家に関する情報を提供してくれたりします。
これらの専門家を活用し、空き家に関する悩みを解決しましょう。
空き家対策特別措置法に関するFAQ
Q. 特定空家に指定されるとどうなりますか?
A.特定空家に指定されると、固定資産税の住宅用地特例が受けられなくなり、税金が大幅に高くなる可能性があります。これは、空き家の放置を抑制し、適切な管理を促すための措置です。
また、市町村から改善のための指導、勧告、命令を受けることになります。これらの措置に従わない場合、最終的には行政代執行により解体される可能性もあります。行政代執行にかかる費用は、所有者が負担しなければなりません。
さらに、特定空家は、周辺の生活環境に悪影響を及ぼす可能性があるため、近隣住民からの苦情や訴訟のリスクも高まります。このように、特定空家に指定されると、経済的、法的、社会的に様々なデメリットが発生します。
Q. 相続した空き家をどうすれば良いかわかりません。
A. 相続した空き家をどうすれば良いか分からない場合は、まず以下のステップで検討を進めてみましょう。
1.相続登記を行う:まずは相続登記を行い、法的に所有者を明確にすることが重要です。2024年4月からは相続登記が義務化されたため、必ず行うようにしましょう。
2.空き家の状態を確認する:建物の劣化状況、設備の故障状況、周辺環境などを確認し、空き家の現状を把握しましょう。
3.活用方法を検討する:空き家の状態や地域のニーズに合わせて、賃貸、売却、リフォームなど、様々な活用方法を検討しましょう。
4.専門家に相談する:不動産会社、建築士、税理士などの専門家に相談し、最適な活用方法を見つけましょう。
相続した空き家は、放置せずに積極的に活用することで、資産として有効活用することができます。専門家のアドバイスを受けながら、最適な活用方法を見つけてください。
Q. 空き家の解体費用は誰が負担しますか?
A.原則として、空き家の解体費用は空き家の所有者が負担します。これは、空き家を適切に管理する責任が所有者にあるためです。
ただし、市町村によっては、空き家の解体費用の一部を補助する制度を設けている場合があります。これは、空き家の解体を促進し、地域全体の環境改善を図るための措置です。補助制度の有無や補助金額は、自治体によって異なりますので、事前に確認しておきましょう。
また、特定空家に指定され、市町村が行政代執行により解体した場合、その費用は所有者に請求されます。行政代執行は、最終的な手段であり、所有者の負担も大きくなるため、事前に適切な対策を講じることが重要です。
まとめ
空き家対策特別措置法は、増加する空き家問題に対処し、地域住民の生活環境を守るために重要な役割を果たしています。この法律を正しく理解し、適切に対応することで、空き家問題の解決に貢献することができます。
空き家を所有する皆様は、まずご自身の空き家の状況を把握し、定期的なメンテナンスや管理を徹底してください。そして、空き家の活用方法を積極的に検討し、地域社会に貢献できるような活用を目指しましょう。もし、空き家の管理や活用についてお困りの場合は、専門家や自治体の相談窓口に気軽に相談してください。
空き家問題は、地域社会全体の課題です。一人ひとりが意識を高め、積極的に取り組むことで、より良い社会を実現できるはずです。

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